農環研IRMSの使い方の覚え書き Mar. 26, 2008; Oct. 2008加筆・修正
Delta Vの構成
カラム: CP-PoraPLOT Q 0.32mm i.d. 10μm 27.5 m (including 2.5m of Particle
Trap) 最高使用温度250℃ 長さは??
よりメタンの分析に適したカラム→COとCH4のRetention timeがずれてくれる CP-Molesieve 5A
1. GC-C-IRMS(MAT252)の立ち上げ方
GC-C-IRMSは、Gas Chromatography Combustion Isotope Ratio Mass Spectrometryの略。
- バックフラッシュを行っていた場合は、まずO2ボンベを閉じる。次にパソコンの画面に"O2OFF, Press Enter"というような表示が出ているはずなので、それに従いEnterをおす。さらに電磁弁を初期化するために、CnfB→ACON-B→SEQUENCE
ACQ→TABLE DIR(右下)→INIT→Enter, MEASURE(左下)とする。
まずO2ボンベを閉じ、パソコンの画面のCONFIG-CnfB→ENVIR-SuppB→Screen-GC-INLETで、O2とHeの弁(No.1 & 3)をクリックして閉じる。(Oct. 7, 2008修正)
- GC本体の上に着いているキャリアガス目盛りを"1.2"にする。
- メタンを分析する場合はGCのOX Reactorの温度を"940℃"に、RED Reactorを"600℃"に設定する。温度設定はPボタンを二回押して温度を合わせ、その後Pボタンを一度押す。CO2だけの場合は温度は室温のままでよい。
- MSのランプが加速電圧以外は全て点灯していることを確認する。
- MSのEmissionを"ゼロ"にする(きっかりゼロにならず0.01ぐらいでも問題ない)。
- イオンソースを"OFF"にする。
- GCとMSを接続する、バルブを反時計回りに少し回せばよい、MSの真空度の針が上がる
- イオンソースを"ON"にする、このとき、High Voltageのランプが点灯する
- Emissionを右に回して最大にする、"1.5弱"になる
- GCのReferenceガス(Working Standard)のボンベを開ける、少し回せばよい。以前の分析で窒素を対象にしていた場合はN2が残っているので、一晩流しっぱなしにして安定するのを待つ。GCの上にあるゲージで0.7barにすると2.0Vぐらいの出力(質量数44)がえら得る。打ち込むサンプルの出力に合わせて調節する。下限の目安は2Vで上限は7V。これ以上だと正確な測定ができない。0.7V程度あれば、ある程度の精度で測定可能(Jan., 2009修正)
- ベースラインが安定するまで待つ。
Referenceガスを打ち込んだとき、出力(質量数44)が2-7V程度になるとよい。2-3時間かかるかもしれない。(Jan., 2009修正)
2. GC-C-IRMS(MAT252)測定の手順 (Oct. 7, 2008加筆)
- Referenceの安定を見るため、CnfD→ACON-D→SINGLE ACQ→USR-ACON画面にし、右下のMETHOD DIRから、std
CO2 on/offを選ぶ。500秒で9回Stdを自動的に注入してくれる。DETECTでBackground[counts/s]が44が210程度以下、46で280程度になるまで待つ。一晩置くと大体安定する。終了後さらにCALCで値を確認し、標準偏差で0.05ぐらいの範囲にあれば使用開始できる。
- サンプル分析の際はYagi CH4 × 6を選び、Measureを押す。
- Peak Centerが終わったら、最初のガスを注入してから、STARTを押す。
■ 具体的手順
44のピークが3-4V程度なら、最初のサンプルを打って5分ほどしてからSTARTを押すことで、一度の測定で5サンプル分析できる。打ち込む間隔は4分10秒ごと。これ以上間隔が狭いと、前のCO2ガスのテーリングの影響を受け、バックグラウンド値が高くなる。
☆ 多量のガス(1ml以上など)を一気に打ち込むと、スプリットパージからガスが抜けてしまうことがあるので注意。
☆ ピークが重なったり、Backgroundが不安定になった場合は、注入口からのリークをまず疑う。リークがあれば、セプタムを交換する。
2'. GC-C-IRMS Delta Vで行う場合の注意点 (Jan. 2009加筆)
- Referenceの出力は、ゲージ0.27barぐらい2.0V程度(質量数44)となる。mat252と異なるので注意。
- mat252と異なり、一回の分析で複数のサンプルを打ち込むとばらつきが大きい。原因はよく分からない。したがって1サンプルずつ分析するしかない。
- 燃焼管のre-oxidationをするときの流路は以下のようにしておく(バックフラッシュをかける)。Heは流しっぱなし。
3. GC-C-IRMS(MAT252)の止め方&バックフラッシュの仕方
- Referenceガスのボンベを閉める。
- GC-MSの接続バルブを時計回りに回して閉じる。力を入れず、軽く閉めること。
- MSのEmissionつまみを反時計回りに回して、"0.2"にする。
- High Voltageを"OFF"にする→加速電圧のランプが消える。
- バックフラッシュを行わず、測定を終える場合は、OX ReactorとRED Reactorの温度を室温(25℃)に下げ、その後Heの流量を0.1ぐらいに下げる。温度設定はPを2回押すと設定温度を変更でき、決定するには、さらにPをもう一度押す(Oct. 7, 2008加筆)。
- バックフラッシュを行う場合は、GCのOX Reactorの温度を600℃に、RED Reactorの温度を室温(25℃)にする。O2ボンベの元栓と、GCへの接続バルブを開ける。キャリアガスはそのまま(流量を下げない)。
- 1-1に書いてる、電磁弁の初期化操作を行う(Oct. 7, 2008加筆)。次にCnfB→ACON-B→SEQUENCE ACQ→TABLE DIR(右下)→O2ONを選択し、Enter→F5 MEASURE(左下)→PRECON: <ENTER> on Screen2が表示される→ScreenのPRECON→O2ON, PRESS <ENTER>の表示→Enterを押す (May 28, 2008修正)
CONFIG-CnfB→ENVIR-SuppB→Screen-GC-INLETで、O2とHeの弁(No.1 & 3)をクリックしてオープンにする。
GC-C-IRMS(MAT252)の適切なガス量について(Oct. 15, 2008加筆、修正)
GC-C-MSには適量のガスを打ち込む必要がある。少なすぎても誤差が大きくなるし(N島さんによると0.7以上が一つの目安)、限界出力が10Vであるため、多すぎても振り切れて測定できない。金子ら(1999)は出力電圧が2-7Vの時に安定した値が得られるとしている。したがって、IRMSにかける前に、別途ガス濃度をガスクロ等で測定しておく必要がある。
ガス注入はスプリット注入法によるので、スプリット比(カラム流量とスプリットベント流量の比)によって同じ濃度のガスであっても最適注入量は異なる。基本的にはスプリット比がある程度高い方がピークがシャープになる。
☆スプリット比・注入量の目安
スプリット比を10、サンプルのガス濃度が1%の場合、0.5mlで3-4V程度となる。同じ濃度でスプリット比を2倍にすれば、必要量は2倍になる。つまりスプリット比が20なら、1%のガスで1.0ml程度必要。「20:1:1」と記憶しておこう。
スプリット比自体が測定値に影響を与えることも知られている。10-20の間の時、真の値に近くなり、それ以上でもそれ以下でも値は大きくなる金子ら(1999)。農環研のシステムでもDelta-VではSplit比が100ぐらいだと、0.5ぐらいずれてくるとの情報あり(N島さん談)。というわけで、スプリット比はできるだけ10-20の間に設定し、それに合わせてサンプル注入量を調節するのがよい。
☆メタンとN2由来成分ピークの重なりについて
メタンのピークの直前にN2由来の成分のピークが現れる(正体は不明)。非常に46/44比が高いのが特徴。このピークとメタンの分離はなかなか難しく、そのためメタンのピークのバックグランド値がおかしな値をとり、結果的にメタンの同位体比の測定がうまくいかなくなる。したがって、N2ガスはできるだけ除去しておくのが望ましい。溶存ガス分析であらかじめバイアルにガスを入れておく場合はN2ガスにせず、Heなどを用いること!(これで痛い目をみている自分。。。)
☆低濃度のメタンと高濃度のCO2が入った試料の分析法(参考までに)
メタンとCO2は一度に分析できない。2回にわけて分析する必要がある。CO2に関しては、スプリット比を上げたり、注入量を減らしたりすることで44のシグナルが2-7Vの範囲に入るように試料を打てばよい。
メタンの場合は、逆にスプリット比を小さくし、注入量を増やすことでシグナルをかせぐ。スプリット比を1:5まで下げると、4,000 ppmのガスを0.5
ml注入することで2V程度のシグナルが得られる。
ただしこの場合、CO2のピークが非常に大きくなり(10Vを振り切れるので、CO2同位体比の測定はできない)テーリング大きくなるため、ガスの打ち込み間隔を長くする必要がある。メタンとCO2濃度が約10倍異なる場合、打ち込み間隔を5分30秒としたところ、テーリングの影響をあまり受けず測定できた。その場合、STARTを最初の打ち込みから5分30秒後(2番目のサンプルと同時)にすることで、4本の測定が可能であった。ただしメタンを測定する場合CO2のピークがないにこしたことはない。プレコンのT1トラップを使ってCO2を除去するのが一番よい。
CO2が振り切れた場合、最初のCO2のテーリングの途中でOPEN SPLITが自動でOUTになる現象が起こる。上記の時間間隔の場合、START後600-700秒後あたりでこの現象が生じる。面倒だが画面をながめて、OUTになったら手動でINに戻す必要がある。ただし2つめ以降のサンプルのテーリングの途中では、このような現象は見られないので、最初のサンプルだけ対応すればよい。
EA-IRMS(MAT252)の立ち上げ方:スタンバイ状態からの復帰の場合
EA-IRMSは、Elemental Analysis Isotope Ratio Mass Spectrometryの略。
- 右パネル左下、Temperature not readyのところにある二つのボタンが押されている状態になっている。この二つのボタンを押し(飛び出してくる)、1時間ぐらい待つと設定した温度になる。酸化管は"1020℃"、還元管は"650℃"、カラム(オーブン)は"40℃"に設定する。温度目盛りは10分の1の表示なので注意。
- Referenceボンベを接続する。GCとつながっている場合は、EAに付け替える。
- 中央のパネル左下のつまみをFlow側に回し、キャリアガスを流す。上の4つのつまみはいじらなくてよい。
- EA本体の上にあるフローコントローラのHeを"0.7"にする。CO2はサンプル量に合わせた出力(Ampl.)になるよう調節する。"0.6bar"で2.6Vぐらいである。
- O2ボンベの"EA"に接続しているバルブを開けてO2を流す。
- EAとMassを接続する。手順はGC-Cのときと同様で、まずEmissionを"ゼロ"にし、イオンソースを"OFF"にして接続し、接続後にイオンソースを"ON"、Emissionを"1.5"にする。
ここまでが立ち上げ操作で、以下は測定に伴うパソコン操作など。
- Cnf-CがEA-Massである。またREF1がCO2、REF2がN2。Cnf-C → EDIT-C → SEQ-EDITで"CHENG-CO2"を選択しEDIT。EDIT-MASKで全サンプル共通となるMASKを作成する。SAMPLE IDENTを見れば分析サンプルが分かるようにしておくとよい。EXIT。
- COPY-MASKをクリックし、START LINE番号、END LINE番号を入力する。1つのLINEが1サンプルに相当する。
- 試し測定。Ref1を開けてスタンダードを入れてみる。画面上の"5"(=質量数46)のAmpl.が6くらいになるようにEmissionを調整する。
- cnf-C, Acon-C, ACMENのSEQ-ACONでCHENG-CO2のSTARTLINを1にしてEND LINEにサンプル数を入力する。SAVEをクリック。
- 試料はターンテーブルに載せる。一番手前の棒のあるところが最初のサンプル、その右横が2番目のサンプル、という順番である。ターンテーブルに書いてある数字は関係ないので注意。
EAの酸化管・還元管の交換について
酸化管、還元管は劣化するので定期的に交換する必要がある。酸化管は800サンプル、還元管は300サンプルを目安に交換する。
- 酸化管の温度を20℃、還元管の温度を50℃、カラム温度を120℃に設定し、一晩おく。
- VENT-Mについている栓を外す。上下のねじを外して酸化管と還元管を上部から引き出す。
- 酸化管、還元管を作る。下の充填手順参照。
- できあがった酸化管、還元管を取り付ける。O-ringは管の上部につける。
- 水トラップの交換は、温度を上げて酸化管、還元管の水を出してから行う。
- 取り付け終わったらガス漏れをチェックする。VENT-M、VENT-Rの二つの栓を閉じて、中央パネル左下のFlowを回し、ヘリウムを入れる。目盛りが上がった状態で、キャリアガスの元栓を閉じ、3分間圧力が下がらなければオーケー。下がった場合はどこかにもれがある。キャリアガスはEA本体の隣にあるHeボンベ。
- ガス漏れチェックが修了したら、VENT-Mに栓をし、VENT-Rは開けておく。
■ 酸化管の充填
- クオーツウールを取り出し、下"40mm"までちぎっていれつつ充填する。軽く詰めればよい。充填用の長い棒が必要。
- 酸化銀コバルトを"60mm"充填。
- 再びクオーツウールを"10mm"充填。
- 酸化クロムを"120mm"充填。
- クオーツウールを"10mm"充填。
- 管の半分ちょっとぐらいまでで充填修了。酸化管は"1020℃"、還元管は"650℃"、カラム(オーブン)は"40℃"に設定する。
■ 還元管の充填
- 酸化管と同様に、下"40mm"までクオーツウールを充填する。きつく詰めすぎないように。
- 石英砂?を"70mm"充填する。
- 再びクオーツウールを"10mm"充填。
- 還元道を充填。硝子瓶に入っており、首の所をカッターで切れ込みをいれてから、バキッとおる。1本全て使う。一度に全部入れるのではなく、徐々に入れていく。
- 石英砂? + クオーツウールでいっぱになるようにする。
EAの試料調整について
Carbonで50-100μg、Nitrogenで30-60μg程度必要。ごく微量なので、微粉砕試料をまず用意する必要がある。これを電子天秤を使って量り取る。試料はスズ箔の容器に入れ、ピンセットを使って封をする。コンタミを防ぐため、アセトンで適宜洗う。
植物体の乾燥サンプルの場合(Carbon含量が40%ぐらい)、サンプル100μgでAmpleが1V、300μgで3Vぐらいになる。
リンク
ガスクロマトグラフ燃焼質量分析計(GC/C/MS)による天然ガス成分の炭素同位体分析 -地質調査所月報(金子ら、1999)MAT252の使用法、注意点などを解説。有益な情報多数。